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コラム - 建築版温故知新(古きをたずねて新しきを知る)

なぜ大工は「大工」か?(後編)

前回に続き、<なぜ大工は「大工」か?>の後編を述べます。

江戸幕府の御奉行様といえば、勘定奉行・寺社奉行・町奉行の三奉行が有名ですが、これら上三奉行に対して、少し格が落ちますが、下三奉行というのがありました。作事奉行・普請奉行・小普請奉行がそれです。これらの役所は、作事奉行が建築工事を、普請奉行が土木工事を、小普請奉行が内装工事をというように、それぞれ分担して建設工事全般を担当していました。たとえば日光東照宮などの幕府が乗り出すような工事では、普請奉行が縄張りや石垣などを担当し、建物そのものは作事奉行が仕切ります。その後、内装などを小普請奉行が担当して仕上げるという工程をたどる事になります。このうち当然ながら作事奉行が「大工」に大きく関係します。茶人として有名な小堀遠州は江戸時代初期の作事奉行を努めた人ですが、作事奉行の配下に「大工頭」という役職がありました。職人ではなく武士がその任にあたるもので、今でいえば局長か課長職に相当するでしょうか。この呼び方は、古い「大工」の意味が濃厚です。江戸と大阪、京都に置かれたこの官職が、大工を中心とする建築技能者を統括していました。他方、技能者の最高官位は「作事方大棟梁」という職があり、苗字帯刀を許され、旗本に匹敵する力もありました。江戸初期では、甲良豊後宗広(長野善光寺本堂を担当)や平内大隈(匠明という木割書を書いたことで有名)などが知られています。当然、この人たちは大工出身であり、その実力を認められて、大棟梁まで上り詰めたということでしょう。「棟梁」の使い方としては、王道を行っていると思います。

日光東照宮

金剛三昧院多宝塔

長野善光寺本堂

長野善光寺本堂

 

その他の建築関連職種ではどうでしょうか? ストレートに理解しにくい名称には、「鳶」と「左官」が上げられるでしょう。「鳶職」は鳶口(木材を扱うために使用する鳶の嘴に似た金具を取り付けた道具)を使う職人、又は、鳶のように高い所で仕事をする職人の意味と考えるのが妥当でしょう。「左官」の由来については諸説ありますが、一番それらしいのは次のようなものです。中世までは賎民とされていた壁塗工は、そのままでは宮中の工事が出来なかったため、仮に官職に任じて木工寮(前述)の属(しょく=律令制に定められた四等官の最下位にあたる「主典(さかん)」の木工寮での呼び名)として宮中の工事に従事させた、という説です。

話は突然飛びますが、「建築」という言葉は、明治時代にアーキテクチュアの訳語として作り出された造語です。現在の建築学会は当初は「造家学会」であり、最初の大学建築学科は工部大学校(現東京大学工学部)造家学科です。同様に「建築家」という職名も当時の造語で、江戸時代までは「建築家」にあたる人は「大工」であることが多かった訳ですから、全く新しい概念といっても良いでしょう。「建築家」はもうご存知の通り、英語における「アーキテクト」の訳語ということになりますが、その「アーキテクト」はギリシャ語の「アルキテクトーン」まで遡ることができます。ところがこの「アルキテクトーン」は「最高の技術者」という意味なのです。では、建築家を意味するギリシャ語が無いのかといえば、そうではなく「オイコドモス(=建築家)」という言葉がありました。古代ギリシャでは、国家的事業には必ず、「アルキテクトーン」を任命しました。ところが、その多くが建設に関わるものだったので、その役には「オイコドモス」が任命されることが多かった訳です。いつの間にか両者が混同して「アルキテクトーン」といえば建築家を指すようになったと考えられます。もっとも、ローマ時代の建築家ウィトルウィウスが書いた建築書によれば、当時の建築家は単に建築にとどまらずに、土木・機械・兵器・占星術など幅広い技術を必要としたようですから、それほど違和感の無い話かもしれません。

もうお気づきと思いますが、「大工」と「建築家」ではニュアンスに若干の差はありますけれど、洋の東西を問わず、全ての技術を統括する最高の技術者の位や尊称が、建築の技術者の名称になっているのは偶然の一致なのでしょうか?もちろん、そのような時代は、現代のように技術が多種多様に展開し、全体の中での建築技術の比重が相対的に低下した状況ではありませんから、当時は技術といえば建築関連だけだったのだと言ってしまう事は不可能ではありません。しかし、私にはそれだけではなく、失礼を顧みずに言わせて頂ければ、現代日本の「大工」や「建築家」に対して、その(全ての技術を統括する最高の技術者という)名前に恥じないように頑張れと叱咤激励しているように思えてならないのです。

 
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