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コラム - 建築版温故知新(古きをたずねて新しきを知る)

木の話(後編)

前回の「木の話」の続きをしたいと思います。

飛鳥時代、大和平野には次々と大小の寺院が建設されました。聖徳太子の時代には法隆寺の前身の若草伽藍を含めて大寺だけでも20以上も建立されています。そのため、大和周辺の森林は伐り尽くされてしまいました。奈良時代に建立された東大寺大仏殿は伊賀地方の材木で建てられ、源平合戦時に平重衡の焼討ちにあった後、大勧進重源上人による鎌倉時代の再建では周防(今の山口県)の材木で建てられました。歌舞伎の勧進帳は弁慶が関守に咎められた義経をありもしない勧進帳を読み上げるというパフォーマンスで救う話ですが、その勧進帳は東大寺再建のためのもので、後々の世に芝居の題材にとられるほどの大事業でした。戦国時代、松永久秀の焼討ちの後、家光による江戸時代の再建(現存)では遂に日本国内では柱を見つけられず、種類の異なる材木を寄せ集めて鉄輪でまとめ集成材のように使っています。東大寺大仏殿に行く機会がありましたら、是非、柱を見て下さい。ちなみに戦国の世から江戸時代初期までの百数十年間、大仏殿は瓦礫の山で、大仏そのものも焼けただれて頭の部分は地面に転げ落ちていたと伝えられています。

東大寺大仏殿(国宝)

東大寺大仏殿(国宝)

東大寺大仏殿(国宝) 内観

東大寺大仏殿(国宝) 内観

 

このように、良材が枯渇したことと、中世以降は製材技術が発達したため、杉はもちろんのこと、松や欅など様々な木が建築材として用いられるようになります。現在日本各地で建てられている木造社寺建築では台湾檜が用いられることが多いようで、国内では良材が見つけ難くなっているのです。もちろん、庶民の住宅には古来より手近な木が用いられたはずで、今日見る事の出来る民家(近世のものが多いのですが)でも柱や梁には様々な地場産の材が使われています。土間の上の天井が張られていない小屋組に、複雑に曲がりくねった松材などが巧みに組み合わされているのを見ると、私などはすぐ感動してしまいます。現在住宅用に用いられている材木の多くを輸入材に頼っていますが、これは、戦後日本の林業が壊滅的状況になって、コスト的に国際競争力を失ったことが大きな理由です。しかし杉などの植林材は現在でもかなりのボリュームで使われていますし、日本で供給される広葉樹はほとんど天然木ですが家具などに多用されています。また、針葉樹の天然木や一部の植林材(例えば、木曾檜・北山杉・秋田杉など)は銘木と呼ばれるように貴重な材として珍重されていることは御承知の通りです。

作田家住宅(重要文化財) 土間の梁組

作田家住宅(重要文化財) 土間の梁組

銘木と言えば、住宅レベルでは床の間廻りをすぐに思い浮かべますが、元々、床柱に使われたのは檜の柾目だけでした。それが数奇屋の影響で様々な木材を使うようになります。先ほど挙げた木曾檜などが銘木として意識されるようになるのは、桃山時代以降のことのようです。ところで、当時は輸入品を唐物と呼びましたが、これは室町時代頃までの輸入先が中国又は中国経由に限定されていたことが原因です。材木も南洋材など(黒檀、紫檀、チーク、他)の銘木が日本に入っていました。国内産の銘木もたくさん使われましたが、それに対して輸入材は唐木と呼ばれて珍重されました。床の間が権威の象徴として形式化されていく過程で、貴重であるが故に唐木が床の間の材料として用いられるようになったのでしょう。今日でも黒檀や紫檀(偽者がほとんどですが)を床柱に使うのは、これらの影響です。ちなみに輸入材の変り種を唐変木と呼びましたが、変人のことを唐変木というのはここから来ていると思われます。

桂離宮の新御殿に「天下の三棚」の一つとして有名な桂棚があります(他の二つは醍醐寺三宝院の醍醐棚と修学院離宮中茶屋の霞棚)。現在は御殿内部の見学は出来ないので、実物を目にした人は少ないはずですが、唐木のオンパレード状態の棚です。建築的というより工芸的な色彩が濃く、個人的にはやや装飾過多と思いますが、当時入手出来たであろう唐木(十二種類以上)が総動員されていて、例えば、黒檀、紫檀、花櫚(カリン)、鉄刀木(タガヤサン)などが使われています。これらの唐木は東南アジア方面の材木ですが、一様に堅くて重いのが特徴です。黒檀はエボニーとも言いますがカキノキ科でゴルフクラブに使うパーシモンの親類です。比重が大きく水に入れると沈みます。紫檀(ローズウッド)・花櫚・鉄刀木はマメ科の高木で模様が美しいのが特徴ですが、特に本紫檀はほとんど入手できない材木で恐ろしく高価です。まず床柱には使えないでしょう。これらの材は現在でも使われていますが、今ではそれ以外の地域からも様々な材が銘木として輸入されています。唐木は種類が多い上に似た種類がたくさんあり、さらに産地によって呼び名が変わったりしますので非常に複雑です。とてもここでは書ききれませんし、門外漢の私よりも専門家の方々にお任せするのが無難でしょう。

桂離宮新御殿(左)と中書院(右)

桂離宮新御殿(左)と中書院(右)

修学院離宮中茶屋霞棚

修学院離宮中茶屋霞棚

 

職人芸的な木の技術の現状がどうかについては、あまり楽観的なことは言えません。もちろん高度な技能を保持している方々は大勢いますが、それが広く普及しているとは言えない状況です。代わりに機械による加工技術は飛躍的に向上しています。それでも、最終的には手仕事には敵わないでしょう。同様に木の良さを再認識する事も必要だと思います。木の良さは自然素材の良さであり、その肌合いの良さと、年月によって劣化と言うよりも風合いを増すことが特徴ではないでしょうか。特に年月による風合いは、人工素材の及ばない部分だと思います。このところ環境対策として、二酸化炭素を吸収させて地球温暖化を防ごうとしたり、ダムに代わる緑のダムとして水害防止や生態系の保護に寄与したり、シックハウス症候群対策で無垢材がもてはやされたりと、木の有効性が叫ばれていますが、それよりも、その肌合いや風合いでもって我々の生活に深く結びついた優秀な素材としての「木」を、建築材料の範囲を超えて見直すべき時かもしれません。

 
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